人間だけではなく、インコやオウム、犬や猫など地球上に存在するほぼ全ての生き物たちは、食べることで健康なからだを維持するために必要な栄養成分やカロリーを過不足なく摂取しています。
そのため、偏った食生活を続けていると、様々な病気や症状が表れ、最悪の場合、死んでしまうこともあります。
そのため、人間もインコもオウムも1日に必要なカロリーを大幅に超えるような食生活を続けるのは、たいへん危険な行為となります。
人間の場合、1日に必要なカロリーは基礎代謝量と身体活動レベル、年齢や性別などによって異なりますが、平均1800kcalから2200lcalと言われています。
では、インコやオウムの場合は1日にどのくらいのカロリーが必要になるのでしょうか。
今回はインコが1日に摂取しなければならないカロリーの計算方法とインコの基礎代謝についてご説明します。
インコやオウムが1日に必要な摂取カロリーについて
インコやオウムが1日に摂取しなければならないカロリーは、体重100g以下の小型インコやオウムの場合、次のようになります。
体重(g) | 成鳥維持代謝量(kcal) | ヒナ維持代謝量(kcal) |
---|---|---|
40 | 14.4 | 28.8 |
50 | 17.1 | 34.1 |
60 | 19.5 | 39.1 |
70 | 21.9 | 43.9 |
80 | 24.3 | 48.5 |
90 | 26.5 | 53.0 |
100 | 28.3 | 57.3 |
維持代謝量とは、インコやオウムが生命維持活動に必要な基礎代謝量に活動時のエネルギーを足したものです。
ヒナは成長速度がとても早いため、成鳥に比べて必要な維持代謝量がおよそ2倍となっています。
インコやオウムのカロリー計算方法
これからお迎えするインコやオウムの体重が100g以上の場合、1日に必要な摂取カロリーはどのくらいになるのか気になる方も多いと思います。
自分でカロリー計算をしようにも、ネットや参考書籍にはインコやオウムのカロリー計算方法は載っておらず、困ってしまう方が大半ではないでしょうか。
現在、日本では鳥類のなかで栄養要求量が分かっている鳥は、ニワトリやウズラなどの産業動物「家禽 (かきん)」のみであり、農林水産省農林水産技術会議事務局にて日本飼料標準として栄養要求量がまとめられているのですが、コンパニオンバードであるインコやオウムに関する栄養要求量は存在しません。
ですが、この既知のデータをインコやオウムの食事構成に外挿することは、彼らの栄養要求量を考えるうえで最も有効な手段となります。特に必須アミノ酸や各種ビタミン・ミネラルの要求量を推測する際に用いられています。
ただし、1つ注意しなければならない点があります。
それは、コンパニオンバード (飼い鳥)と家禽では飼養目的が全く異なるということです。
家禽の飼料は成長率や生産率の向上を図る目的の計算方法ですので、コンパニオンバードの健康や長寿に関しては考えられておらず、さらに家禽とコンパニオンバードでは食性や体格も大きく異なるため、維持要求量が判明したとしても全てが外挿するわけではありませんのでご注意ください。
では、カロリーの計算方法をご紹介します。
まず、1日に必要なエネルギーの計算式に登場する基礎用語をご説明します。
・粗 (総)エネルギー「GE」
摂取した飼料が持つ総カロリーのこと
・可消化エネルギー「DE」
粗エネルギーからフンとして排出されてしまうエネルギーを差し引いたもの
・代謝エネルギー「ME」
可消化エネルギーから尿として排出されてしまうエネルギーを差し引いたもの
・正味エネルギー「NE」
代謝エネルギーから栄養素の代謝熱を差し引いたもの
4つのエネルギーのなかで「ME」のみが摂取した飼料から鳥たちが使うエネルギーの基本値として考えられております。
では、実際に「産卵していないメスのニワトリの必要エネルギー」を算出してみましょう。
産卵していないメスのニワトリの必要エネルギー算出
・基礎正味エネルギー量
(NEm)=83×体重 (kg)^0.75
・基礎代謝エネルギー量
(MEm)=NEm/0.82
・ケージ飼育の活動エネルギー量
(MEactivity)=Memの37%
・必要な総ME量
=Mem+Meactivity
この数値から鳥類の体重1kgあたりの総ME量を単純に計算すると、
・101+37=138kcal
となります。
さらに割り算してゆくと、体重別の総ME量が判明します。
・100gの鳥ならば、13.8kcal
・300gの鳥ならば、41.4kcal
・700gの鳥ならば、96.6kcal
さらに鳥の適温22℃を加えて、補正値を乗じると、
・(‐0.081×(22‐気温)の自乗+2×(22‐気温)+94) / 94
冬の気温が10℃ならば、1.13を適正値の乗じ、夏の気温が30℃の場合は0.77を乗じます。
その結果、100gの鳥ならば、冬は15.6kcal、夏は10.6kcalが1日に必要な摂取カロリーとなり、500gの鳥ならば、冬は78.0kcal、夏は53.0kcal必要となります。
では、ラウディブッシュのペレットを500gのヨウムに食べさせる場合、どのくらい必要になるのかを計算しましょう。
ラウディブッシュのペレットを500gのヨウムに与える場合
ヨウムの体重は500g、ラウディブッシュのペレットは100gあたり343kcalですので、
・通常期69.0/343×100=20.1g
となり、通常期の体重500gのヨウムにラウディブッシュのペレットを与える際は1日に20.1gで良いということになります。
初めての方には少々難しいかもしれませんが、この計算式を用いてコンパニオンバードに必要な1日のエネルギー量を算出してゆきましょう。
ただし、あくまでインコやオウムとは異なる家禽に必要な栄養要求量ということを忘れてはいけません。
インコの基礎代謝について
インコやオウムの基礎代謝についてですが、個体によって異なるため、極端に代謝の悪いインコやオウムもいれば、食欲旺盛にも関わらず体内吸収が悪く太ることができない個体もいます。
極端に代謝の悪いインコやオウムの場合、1日にたった4gの食事で100g前後の体重を維持することができため、食事を4g以上与えてしまうと体重が増えてしまいます。
一方、太りにくいインコやオウムの場合は、自分の体重の10%から13%の食事を毎日摂っています。
なので、新米飼い主さんは、インコやオウムの体重を計り、1日どのくらいの食事を摂ったのかを調べましょう。
もし、体重の6%から9%ほどの食事を摂取しているならば、基礎代謝は標準となり、それ以下ならば代謝が悪い、それ以上ならば代謝が良いとなります。
ただし、殻付きの種子を与えて食事量を調べた場合、食べた後に残る殻の重さも含めたものになりますので、実際に食べた量はそれよりも若干少なくなることを覚えておきましょう。
このように個体によって基礎代謝の良し悪しが異なりますので、これからインコやオウムをお迎えする飼い主さんは、お迎えしたインコの食事量をしっかり把握できるよう、こまめにチェックするようにしましょう。
今回はインコが1日に摂取しなければならないカロリーの計算方法とインコの基礎代謝についてご説明させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。
インコやオウムは個体によって摂取カロリーや基礎代謝が異なりますので、これからお迎えする飼い主さんやお迎えをご検討中の方は事前に彼らが1日に必要な摂取カロリーがどのくらいなのかなどを知り、健康で長生きできるようにサポートしてゆくようにしましょう。