インコやオウムの餌といえば、稗・粟・黍・カナリーシードなどの種子がミックスされたシード餌を思い浮かべる方も多いと思いますが、鳥専門の動物病院やペットショップへ行くと、シード餌よりもペレットを与えた方が良いとオススメされることがあります。
ペレットとは、総合配合成形飼料と呼ばれる餌のことです。
インコやオウムは何万年も前から植物の種子を主食として食べている動物ですが、種子だけではたんぱく質やビタミン、ミネラルなどを摂取することができません。そのため、彼らは不足した栄養素を補うために野菜や果物、昆虫や動物の死肉などを食べることがあります。
しかし、人間の世界に住むインコやオウムの場合、食事の内容や時間などは全て飼い主によって決められているため、彼らは自由に不足した栄養素を補うことが出来ません。
その結果、身体を維持することができず、体調不良や重篤な病を引き起こし、最悪の場合、死に至ることもあります。
ペレットは、栄養不足になりがちなインコやオウムを救うために誕生した人工飼料であり、メーカーごとに配合されている成分などは微妙に異なりますが、これだけでほぼ全ての栄養素を補うことができ、含有されている脂肪分も平均7%ほどですので、肥満予防にもなります。
ペレットはドッグフードやキャットフードと同じ、インコやオウムの健康維持のために開発された餌ですので、鳥類に詳しい動物病院の獣医師やペットショップでは、シード餌よりもペレットを与えた方が、新米飼い主さんも彼らの健康管理がしやすくなるなどの理由から推奨されています。
しかし、人間の手によって作られた人工飼料であるペレットは、自然界に存在しないため、ペレットを始めて見るインコやオウムたちは食べることに抵抗を感じ、くちをつけようとしないことも多々あります。
そこで、今回はインコの主食ペレットについて、ペレットの選び方とペレット食への切り替え方や主食としてペレットを与えることのメリットデメリットをご説明します。
ペレットの選び方
ペレットは、人間の世界で暮らしているインコやオウムたちにとって、健康なからだを維持するために必要な栄養成分が全て配合された総合栄養食ですので、どうしても食べさせたいという飼い主さんも多いと思います。
ですが、ペレットはここ十数年のあいだに誕生した歴史の浅い食べ物であり、本当に彼らの健康を維持することが可能なのかどうかという信頼性に欠ける部分があるのも事実です。
さらに、現在日本をはじめ、世界各国で販売されているペレットの多くがアメリカなどの海外製であり、国産にこだわっている飼い主さんからすると少々抵抗があるかもしれません。
そこで、今回はペレットの正しい選び方をご紹介します。
まず、ペレットの選び方で気を付けなければならないのが、「色と臭い」です。
いくら栄養バランスが整っている餌だといっても、色や臭いがキツイものは人間でも食べたいとは思わないですよね。
特に色の強いペレットは着色料が使用されていることが多く、人間には害が無くても、インコやオウムに害がないとは限りませんので、こういった色や臭いの強いものは与えるのを避けた方が良いでしょう。
次に気を付けたいのが、「ペレットのサイズ」です。
ペレットに含まれている栄養成分は、どのメーカーもほぼ同じですので、どんな種類のインコやオウムに与えても問題無いように思われますが、それは誤った解釈です。
例えば、オカメインコを中心に実験を繰り返し行ったとされるラウディブッシュ社のペレットを大型インコに与えた場合、大型インコと小型・中型インコのオカメインコとでは1日に必要な栄養量が異なるため、大型インコにペレットを与えても栄養不足を補うことが出来ないということになります。
実際に大型インコを飼養している飼い主さんたちがペレットを飼い鳥に与えたところ羽つやが悪くなったという報告が上がっています。
もう1つ気を付けなければならないのが「安全性」です。
日本では、海外産と聞くと添加物や農薬の不安から国産のものを購入する傾向がありますが、ペレットに関してはアメリカなどの海外産の方が国産よりも安全性が高いため、鳥専門の動物病院やペットショップでも国産よりも海外産を強く推奨しています。
なぜ海外産のペレットの方が国産よりも安全性が高いのかと言いますと、オーガニックに関する意識やオーガニック原料の自給率などが日本と比べて欧米の方がはるかに高く、インコやオウムに関する栄養学の研究も日本より進んでいるからです。
もちろん、日本でも国産無農薬の穀物は販売されておりますが、オーガニックバードフードの製造はほぼ行われておらず、国内メーカーでペレットを製造・販売している製品で原材料を明確にしているのは1社のみとなっています。
日本は人間に関する食の安全性などは世界でもトップクラスを誇っているのですが、インコやオウムなどの動物になると安全性などに疎い一面がありますので、「海外産だから危険、国産だから安全」という概念は捨て去った方が良いでしょう。
シード餌からペレット食への切り替え方
インコやオウムにとって、自然界に存在しないペレットは未知なる食べ物となるため、シード餌からペレット食への切り替えはとても難儀なものとなります。
これはインコやオウムの種類や性格にもよりますが、いくらお願いしようが、強制しようが、死にかけようが、頑なにペレットを食べない子もいますので、その場合は彼らの健康のことを考え、ペレットに切り替えず、今までどおりシード餌を中心とした食生活を続けるようにしましょう。
シード餌からペレット食へと切り替えが可能な子の特徴は、幼い頃からペレットに触れている子です。
鳥類は物心がつくと、様々なものに対する好みがはっきりするようになり、その子の個性も徐々に際立ってきます。
しかし、人生経験の浅い時期の彼らはとても柔軟なので、ペレット食を中心とした食生活を考えている飼い主さんは挿し餌から成鳥の餌へと切り替える際、シード餌を一切与えずにペレット食を与えれば、インコやオウムたちは「これが自分の餌なんだ!」と認識するようになります。
ペレット食により抵抗を無くすためには、ヒナ食の定番となりつつある「パウダーフード」を活用することがオススメです。
パウダーフードは、非常にペレットに近い成分を含んでおりますので、ヒナ食⇒ペレットへの切り替えがとても安易になります。
ペレット食だけではなくシード餌も食べてもらいたいという飼い主さんの場合も同様です。
インコやオウムに「ペレット食が自分の餌なんだ」と認識させたとしても、何万年も前から種子を食べ続けてきた彼らにとって、幼い頃にシードを与えなくても、自然と食べることができます。
人工的なものほど彼らは強烈に拒むので、将来ペレット食とシード餌どちらを食べさせたいのかで悩んでいる方は、慣れるまでペレット食を与え続け、成鳥になったらペレット食とシード餌を与えるようにすると良いでしょう。
では、成鳥となったインコやオウムの場合、どのように切り替えてゆけば良いのでしょうか。
成鳥のシード餌からペレット食への切り替え方
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- シード餌に砕いたペレットの粉を振りかける。
- 慣れてきたら、粉に加えて小粒のペレットを少量シード餌に混ぜる。
- インコやオウムがペレットを砕いている様子を確認したら、お昼の食事をペレットだけにし、夜寝る前にシード餌をお腹いっぱい食べさせる。
※③は食べても食べていなくても彼らがペレットを砕いていればOKです!
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- お昼に与えたペレットを食べていることを確認したら、夜に与えるシードの量を徐々に減らしてゆき、ペレットを多めに入れます。
※砕いて粉々になっており、フンをしているかどうかをしっかり確認してください。
- 一か月かけてゆっくりペレットの量を増やしてゆきます。
- 完全にペレットを主食として定着させることができたら成功です!
ペレット食への切り替えが完了したら、一か月以上あいだを置いて寝る前のおやつとしてシードを少量与えても問題ありません。
ただし、シードを与え過ぎると逆戻りしてしまう恐れがありますので、ほんの少しだけ与えるようにしましょう。
ペレットのメリットデメリット
ペレット食に切り替えたいという飼い主さんにメリットとデメリットについてご説明します。
ペレット食のメリットは、
- 全ての栄養成分をバランスよく摂取することができる
- 含有されている脂肪分がどのメーカーも平均7%ほどなので肥満防止になる
- 餌の補給がラクチン
- 初心者飼い主さんでも栄養管理が簡単にできる
一方、ペレットによるデメリットは、
- 単食になりやすいため、ストレスが溜まる
- 1つのメーカーのペレットばかり与えてしまうと慢性症状が表れる恐れがある
- インコやオウムが好んで食べたくなるものではないので、シードからの切り替えが非常に難しい
- 値段が高く、海外産が多いので入手が困難
- 人工飼料なので添加物や農薬が心配
などが挙げられます。
ペレットを与える際は、インコやオウムの種類や性格などを考えて切り替えたり、与えたりするのがポイントですので、まずは鳥類専門の動物病院やペットショップ、ブリーダーにペレットに切り替えた方が良いのかどうかなどを相談することから始めましょう。
今回はインコの主食ペレットについて、ペレットの選び方とペレット食への切り替え方、主食ペレットを与えることのメリットデメリットについてご説明させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。
ペレットは自然界に存在しない食べ物ですので、いきなり出されて食べてほしいと言われても、インコやオウムは困ってしまいます。
人間もそうですが、初めて見る者に対しての抵抗は凄まじいものですので、どうしてもペレット食に切り替えたいという飼い主さんは、鳥類専門の動物病院やペットショップ、信頼できるブリーダーに相談するようにしましょう。