インコやオウムなどの鳥類は、群れから追い出されたくない一心で自分が病気であることを隠す習性があります。
この習性は人間と共に暮らすようになってからも変わっておらず、飼い主さんに心配かけまいと、体調が悪いのに食事を食べたフリをしたり、元気なフリをします。
そのため、気付いたときには手遅れだったというケースも少なくありません。
特に新米飼い主さんの場合、インコやオウムたちの小さな変化に気付くことができず、ある朝ケージ内に横たわっている彼らの姿を見て涙することも多いそうです。
そんな悲しい出来事を引き起こさないために、飼い主さんはインコやオウムの健康管理をこまめに行う必要があるのですが、触診や視診を行う場合、ある程度の知識が必要となります。
そこで、新米飼い主さんでも一目で彼らの健康状態をチェックすることができる「糞の見分け方」をご紹介します。
鳥の糞について
インコやオウムなどの鳥類は、消化器排泄物「便」と腎排泄物「尿」を1つの排泄孔からまとめて排泄するため、人間とは異なり、少々水っぽいのが特徴です。
糞の色は、日々作り換えられる赤血球の廃棄物の影響を強く受けており、健康的な糞は緑色をしています。
インコやオウムの健康管理を行う場合、糞の色を見れば一目瞭然ですので、毎朝の糞掃除の際は必ず確認するようにしましょう。
鳥類の排泄物から健康状態を知る方法
鳥類は1つの排泄孔から便と尿を同時に排泄しており、尿には固形尿 (尿酸)と水分尿の2種類あるため、新米飼い主さんの場合、多尿と下痢を混同してしまったり、血便と血尿を間違えてしまうことが多々あります。
まずは、鳥類の糞便と尿の異常を見分けるコツからご説明します。
インコやオウムなどの鳥類は、穀食性・果食性・蜜食性・雑食性の4タイプに分類され、種類や食性などによって微妙に糞便の形状が異なります。
今回は、日本で多く飼養されているセキセイインコとオカメインコの小型インコ類と文鳥やキンカチョウなどのフィンチ類の糞便を中心にご説明します。
セキセイインコ・オカメインコ・文鳥・キンカチョウなどのコンパニオンバードの場合、健康的な糞便の色は食餌によって大きく異なります。
食餌の違いによる健康的な糞便の色
食餌の種類 | 健康的な糞便の色 |
---|---|
シード餌中心 | 黄褐色~深緑色 |
無添加のペレット食中心の食生活 | 黄銅色~黄褐色 |
着色料が含まれているペレット食 | 着色料の色 |
ひまわりの種など脂肪分を豊富に含むシード餌を豊富に与えている | 濃緑色 |
固形尿の場合、糞便に付着して排泄されるため、健康的なインコ類の場合は巻いた糞便を中心に付着し、フィンチ類ならば棍棒状からコンマ状の便の表面に付着しており、色は白色となっています。
インコ類もフィンチ類も水分尿の排泄量は少なく、多尿が連日続くようならば、身体に異変が表れている可能性が高くなります。
ただ、ローリーやロリキート類の場合、健康な状態でも大量の水分尿を排泄するため、見分けるのが少々難しくなっています。
多尿と下痢の見分け方
鳥類における下痢というのは、便の形状がドロドロになった状態のことを表します。
一方、多尿の場合は水分尿が多く、下痢とは違って便の形状がしっかりしており、周囲に染み込む水分が多い場合を指します。
しかし、下痢でなくても多量の水分尿によって便の形状が崩れてしまっているときやペレット食で水分を多量に摂取してしまった場合は軟便になりやすくなるため、この状態で下痢かどうかを見極めるのはとても難しいと言われています。
新米飼い主さんが下痢か軟便なのかを見分ける場合、真正の下痢ならば食欲不振や体重減少が見られ、多尿ならば重度の糖尿でない限り、すぐに元気になり、食欲が無くなることもありません。
多尿と下痢を引き起こす病気をまとめましたのでご参照ください。
糞便の状態 | 隠れている病気 |
---|---|
多尿 | 糖尿病・腎機能障害・肝機能障害・二次性副甲状腺亢進症・心因性・食餌性・緊張や興奮・発情中のメス・換羽など |
下痢 | 胃腸炎・胃がん・中毒症状・腹膜炎・感染症など |
糞便の色から分かる健康状態について
では、糞便の色から分かるインコやオウムの健康状態についてご説明します。
便の色から分かる異常
糞便の色は、胆汁色素・食べ物・食事摂取量・通過速度などによって決まります。
鳥類の胆汁色素は「ビリベルジン」と呼ばれる濃緑色をした成分ですので、緑色が入っている糞便ならば健康な状態と言えます。
しかし、鮮やかな濃緑色の軟便の場合、何かしらの異常が身体に生じている可能性がありますので、速やかに病院で診てもらうことをお勧めします。
このような便の場合、鉛などの重金属中毒を引き起こしていることが多いため、レントゲンを撮ってもらうようお願いしましょう。
その他の緑色の糞便の原因は、食事摂取量の減少・感染症・ペレット食の着色料・多量の青菜摂取などが考えられます。
では、他にはどのような便の色があるのかをご紹介します。
- 白色
膵臓から消化酵素の分泌が正常に行われておらず、デンプン (炭水化物)の消化が出来ていない可能性があります。白色便は通常便の形状を保っているのですが、高浸透圧性の下痢を起こすと形状が崩れ、水分過多の糞便となってしまうのです。
ただし、フィンチ類の場合、便周囲に尿酸が付着しているため白く見えるため、正常な糞便かどうかを確認する場合、便を切って中の糞便の色を確認し、正常な色ならば問題ありません。
- 黒色
胃などの上部消化管で出血している可能性があります。
上部消化管の主な出血原因は、カンジタ・メガバクテリアなどの細菌やウイルスによる感染症・胃炎・胃がん・中毒症・グリットの過剰摂取・肝不全などが考えられます。
また、食事の摂取量が減少したときも緑色の糞便ではなく、黒色便になることがあります。
- 血便
糞便に鮮血が混じっている場合、総排泄腔内もしくは下部消化管から出血を起こしている可能性があります。
血便の主な原因は、総排泄腔内の炎症もしくは腫瘍・産卵後の卵管口裂傷・下部消化管の炎症または腫瘍・重金属中毒症・肝不全などが考えられます。
オスのコンパニオンバードの場合、過剰な自慰行為や外傷などで起こる場合がありますので、健康管理の際に確認してください。
- 赤色
人参やスイカ、赤い着色料が使用されているペレットなどを与えると赤色になることがあります。
便の形から分かる異常
- 巨大便
発情中のメスによくみられるのが、巨大便です。
営巣時は巣内を汚さないようメスのインコやオウムたちは総排泄腔の糞洞が広がり、便を溜めてから排泄するようになるため、排便回数が極端に減少します。
発情中のメスならば、この糞便は正常と言えますが、エストロジェン分泌性の精巣腫瘍・脊髄障害・腹腔内のマス・腹壁ヘルニアなどによる排泄障害でも巨大便が生じるため、発情中のメス以外でこのような症状が表れている場合は、たいへん危険です。
- グリット便
グリットとは、筋胃内に停留する砂のことです。
大半のインコやオウムは、ボレー粉や塩土などの鉱物飼料を飼い主さんから与えられて摂取していると思いますが、食べ過ぎたり、蠕動亢進によって筋胃内から流出している場合、グリットが糞便に含まれることがあります。グリットが筋胃内に大量に停留してしまうと、吐き気や嘔吐の原因となります。
- 完穀便 / 全粒便
完穀便や全粒便と呼ばれる糞便は、穀物の粒がすり潰されずに不完全または完全な状態で糞便に混入している状態のことを指します。
鳥類は歯が無いので食べ物を丸呑みしています。そのため、穀物のような硬い食べ物を摂取した場合、筋肉が発達した筋胃があり、筋胃内でグリットと共に穀物をすり潰しているのです。
完穀便・全粒便が排泄された場合、筋胃部分に障害が生じている可能性があり、カンジタ・メガバクテリア・寄生虫などによる感染胃腸炎・胃がん・胃の蠕動異常を起こしている恐れがあります。
尿酸から分かる異常
- 黄色尿酸
尿酸が黄色の場合、感染性肝炎・脂肪肝症候群などによる幹細胞障害を起こしている恐れがあります。
速やかに動物病院へ行き、血液検査で肝機能検査を行ってもらいましょう。
- 緑色尿酸
尿酸が緑色の場合、溶血を伴う急性感染性肝炎・溶血を伴う敗血症などが考えられます。
特に溶血を伴う敗血症は、卵管炎や腹膜炎によくみられる症状となっています。
- 赤~オレンジ色の尿酸
尿酸が赤~オレンジ色の場合、心疾患を患っている可能性があります。
心疾患を患っているインコやオウムの場合、心拍数が亢進し、溶血が起こった場合や過度な運動による筋肉の損傷、重金属中毒症などが考えられます。
- 赤色尿
尿酸とは異なりますが、赤色の水分尿が出た場合、重篤な溶血による血色素が尿に混ざっている可能性があります。
ボウシインコなどの重金属中毒症でみられることがあるので、ボウシインコを飼養してる飼い主さんはこのような症状が表れた場合、手遅れになる前にかかりつけの動物病院で診てもらうようにしましょう。
臭いから分かる異常
健康なインコやオウムであれば、糞便から臭いを感じることがほとんどありませんが、悪臭がする場合、腸内細菌叢の異常や排便障害などによる総排泄腔内の異常が考えられます。
また、発情中のメスの排泄物から悪臭を感じることがありますが、これは発情中に糞便を留めてから排泄する習性によるものですので、問題ありません。
悪臭を放つ糞便の場合、クロストリジウムという細菌が検出されることがあり、鳥類には無害でも人間にとっては食中毒を引き起こす原因となりますので、早急に問題を改善しましょう。
インコやオウムの健康管理をしながら、毎朝糞便掃除を行っている飼い主さんも多いと思います。
何気なく片付けている糞便から彼らの健康状態が分かりますので、今日から健康管理の一環として糞便の状態チェックも行うように心掛けましょう。